【知っておきたい新築時の白アリ対策】
「あらっ 新築のときって白アリ消毒は必ずやるように義務付けられているんじゃないの?」
と勘違いしている方も多いようです。
たしかに建築基準法や住宅金融公庫でそのような時期もありましたが、いわゆるシックハウスの薬害問題の深刻さがクローズアップされるにつれて94年以降は薬剤以外でもOKになりました。

(余談になりますが、建設省や住宅金融公庫はいままでも義務化はしていないと主張していますが、建築基準法、住宅金融公庫の仕様書の解釈如何では強制とも受け取れ、新築時の白アリ消毒は法律的に義務と信じている工務店関係者もいまだに多いのはようです。)

それはともかく新築時に床下に薬剤をまけばてっとりばやく白アリ対策ができます。しかし同時にシックハウスになる危険も覚悟しなければなりません。事実、白アリ防除で永年後遺症で苦しんでおられる方も実は水面下で相当な数に上っているという報告もあります。

そこで、ここでは全く化学薬剤に頼らない新築時の白アリ対策としてお考え下さい。




@ その土地は大丈夫?

{山際の造成地は慎重に!

<事例1>
私の住んでいる隣町での話しです。
新築1年後に畳が抜けた家があります。原因は白アリです。家主さんはカンカンになって大工さんを怒りました。当然といえば当然かもしれません。たった1年で床が抜ければ誰だって泣くになけない気分ででしょう。
でもこれは大工さんの責任ばかりとは言い切れないのです。なぜなら原因は土壌表面からは全く見えない地下に埋められてあった「切り株」だったのですから。

というわけで、まず新築の際は、その土地がかってどういう場所だったのか調べてください。とくに山を切り開いて造成したばかりの土地は要注意です。
というのは私もかって山を造成している現場を見た事がありますが、そのときはブルトーザーが切り株や小さな木を根こそぎなぎ倒して踏みつけていました。そこにダンプカーが土を運んで再びブルトーザーがその土を平らに成らしていました。さっきの木々はもう跡形も見えません。
私はあの上に家を建てたら間違いなく白アリにやられると思いました。土建屋さんがいつもそういう造成をするのかどうかわかりませんが白アリの巣の上に家を建てれば結果は明らかです。


A 一に通気、二に通気。―基礎づくりのときに要注意!

{通気口は多ければ多いほど良い!}

<事例2>
その家は床下を中腰で歩けるほど高かったのですが・・・・
ある家の床下検査を依頼されました。
それで和室の畳を一枚上げて杉板を剥いで床下に潜りました。床下の高さは1メートル強はあり、中腰で歩けるほど高かったのです。
たまたま足元に落ちていた残材に白アリを発見しましたが中基礎で各部屋ごとに床下が仕切られているため他の部屋の状況は全く解りません。
それで実際の工事のときに基礎割をしながら他の部屋に進みました。その結果全ての部屋の地面はジットリするほど湿気ていました。当然、床板の裏面はビッシリ茶色のカビだらけです。外基礎の通気口の数は多くもなく少なくもなくふつうでした。

つまり床下がどんなに高くても各部屋ごとに基礎で仕切られていては風が通りません。
また基礎の高い家はどこも通気口も同じように高い位置に設けられています。これでは
床下上部の風の流れはあってもかんじんの土壌表面ちかくの風の流れはないのです。

私たちは単純に基礎が高ければ高いほど床下は乾くはずと思いがちですが「基礎の高さ」と「通気の良さ」は全く別問題なのです。逆に床下空間の容積が大きくなればなるほど空気の流れは悪くなる理屈です。体育館に扇風機を置いた場合と狭い室内においた場合ではどっちが空気の流れが強くなるでしょう。答えは明らかです。これは誰もが見落としがちな盲点です。
ですから基礎の設計のときからこの家の床下がカビでいっぱいになる運命はすでに決まっていたといえるでしょう。通気口の数は耐震性に影響がないかぎり多いにこしたことはないのです。
この場合は@ 中基礎にも充分な風の流れが起きるように初めから通気口をもうけるべきでした。そしてA 外基礎の通気口の数を増やし、同時に位置も、もっとさげるべきでした。


B 浴室よりもまず玄関に注意!

{意外な盲点!被害が増えています!}

白アリというと大多数の人は浴室や水回りにもっとも出やすいと思われる方が多いのではないでしょうか。決して間違いではありませんが浴室に負けないくらい出やすい場所が実は玄関です。
浴室というと最近は、ほとんどがユニットバスで、タイル貼りの従来の浴室は減りつつあるようです。ユニットバスは床下をコンクリートのタタキにしますから浴室の下も空間になっていて覗くこともできます。ユニットバスの下は白アリの生息しづらい空間になりました。

ですから浴室よりもむ白玄関のほうがこれからは白アリ発生の確率が高くなるような気がします。
たとえば「玄関の柱」は玄関サッシのために見えにくい構造になっている場合が多くなりました。また「柱の下部」もポーチのなかに埋め込まれているをよく見かけます。
また「玄関内側の壁の下部」がタイル貼りになっている家。
そのほか玄関はある意味その家の顔でもありますからいろいろ凝ったつくりにしている場合が多いのですが、いずれに白「埋め込まれた木部」および「タイル等の下地板」が白アリを呼び込みやすくします。
白アリにとっては蟻道をつくる手間が省け、コンクリートの内側からだれにも知られずに、直接木部に侵入できますからこんなにいいことはない。そこから容易に二階に侵入することもあります。

また作りつけの「下駄箱の下部」も要注意です。そこが密閉空間になっている場合があるからです。
「上がりかまち框の裏側」に板を使っている場合もまず100パーセント近く白アリが上がってくるといっていいと思います。同じ事は「勝手口」についてもいえます。
タイルまたはモルタルの裏の下地板は地面と接触している場合が多く、そこから白アリは容易に上ってこれるからです。気が付いたら、上がりかまち框が空洞になっていたなんてことも珍しくないのです。
これらの盲点は事前に大工さんと相談すれば全て防げる事ばかりなのですが・・・・・
白アリといえば浴室、だけでなくこのように玄関は意外な盲点なのです。




C 床下をコンクリートで覆えば白アリは防げるか?

{ベタ基礎がおすすめ!}

4年前に「住宅性能保証制度」が施行されてから床下全面をコンクリートで覆う家が増えてきました。当初は私も単純に考えて床下全面をコンクリートで覆えば地面からの湿気は防げるし白アリも防げるだろうと思っていました。
ところが何度かそういう家を検査するうちにどう考えても私の頭では理解できない現象を床下で見る事になったのです。

<事例3>
真夏のそとは30度以上の猛暑の日でした。
そとがこんなに暑い日ならさぞかし床下も乾燥しているだろうと思って床下に潜るとひんやりしていい気持ち、そしてそこで見た光景は納得のいかないものでした。
というのは基礎の内側全面にビッシリ水滴が付着していたのです。よく見るとガス管でしょうか、配管にも水滴がついて濡れています。ちょっと斜めになった配管に下部にその水滴が集まってゆっくりとポタポタ下に落ちているではありませんか!そして合成樹脂性の束にも水滴がついています。一体この水分はなんだろう?
どこか水漏れでもしているのだろうか?それともこの家の住人があまりに暑い日なので通気口からホースで床下に水でもまいたのだろうか?でもどうもそうでもなさそうです。

 じつはこれと同じ現象はかなり以前にも何度か目撃していたのですが納得いかないまま自分でもウヤムヤにしてきました。どう考えても訳がわからなかったからです。それも目撃する時期は、なぜかきまって真夏の季節だけなのです。
そしてたまたま、ある大学教授の「1年間の床下湿度の変化を調査した記録」を読んでやっと疑問が解けました。
その大学教授もやはり猛暑の日、床下に潜って私と全く同じ経験をしていたのでした。そして1年間の床下湿度の変化を調査した結果、答えが出ました。

答えは「結露」です。
簡単に言うと、水分をタップリ含んだ真夏の空気が床下に流れて日陰のために冷やされると、それまで抱え込んでいた水分を抱えきれなくなって吐き出すという現象が床下で起きるのです。
その吐き出された水分が結露となって基礎の内側や束、配管類に付着するというわけだったのです。
空気が水分を抱え込む量は温度が高ければ高いほど多く、低ければ低いほど少ないということも初めて知りました。恥ずかしながらこんなことは物理の常識らしいです。
つまり床下をベタ基礎または防湿コンクリートで覆ってもそれですっかり安心して通気をよくすることを忘れると逆に結露が土台を傷める危険があるということです。

それで白アリはどうなのかというと、まず床下をコンクリートで覆う場合には

@ はじめに外基礎を立ち上げてから後に床下全面をコンクリートで覆う工法(外基礎+防湿コンクリート)

と、

A 床下全面をコンクリートで覆ってからその上にコンクリートで覆う工法(ベタ基礎)

の、 ふたとおりの工法があるのですが、このAの(ベタ基礎)の場合はコンクリートにひび割れでもないかぎり、ほとんど白アリの侵入する隙間がないので安全といえます。
問題は@の(外基礎+防湿コンクリート)の場合です。この場合は逆に白アリを呼び込んでしまいとても危険です。というのは外基礎と防湿コンクリートの間に隙間ができるとそこから一気に白アリが上ってくるからです。




D ポーチや犬走りの下は白アリの天国?

{家周りのコンクリートの多用は命取り!}

床下をコンクリートで覆ったり、家周りを犬走りで囲ったり、ポーチやベランダのある一見、格好いい家が増えています。
床下のみならず家の外回りをこのようにコンクリートで囲むことが白アリを呼びこむ大きな要因になっているといったら皆さんは「はあ〜?」と思うでしょうか? 
このようにコンクリートを多用することが将来、爆発的な白アリの被害を招くことになると主張している本をかって読んだことがあります。そのときは私も「はあ〜?」と思いました。
ところが最近、白アリ防除の仕事をしていて、どうもそれが当たっているとしか思えない場面に遭遇することが増えてきました。

<事例4>
一年前に白アリ駆除をしたお宅から今年春、電話がかかってきました。
玄関ポーチに羽アリが大量発生しているとのこと。さっそくお邪魔して玄関ポーチ脇の和室から床下にもぐってみました。
和室の土台が玄関ポーチの高さと同じでしかも接しているつくりなので和室の玄関ポーチ側の土台に必ず蟻道があるはずだと予想したからです。
ところがいくら探しても蟻道が見つからない。ということは床下内部からの侵入ではないということになります。ではどこから?
答えは玄関脇のポーチと外壁の隙間でした。
玄関脇のポーチの高さが外壁の下部の高さと同じ位置だったので外壁に蟻道が隠れて見つからなかったのです。
つまり床下内部からの侵入ではなくポーチの下から土台に侵入したのでした。
おそらくポーチの下に型枠の残材かなにかが埋まっていたのかもしれません。とても発見が難しいこういう事例はこれからも増えていくと予想されます。

ところで、なぜコンクリートの下は白アリが生息し易いのでしょうか?
なぜコンクリートは白アリを呼びこむといえるのでしょうか?
白アリは床下に限らず屋外にもどこにもいます。
ためしに、あなたの家の庭を注意深く観察してみれば見つけるのはそう難しくないはずです。(もし発泡スチロールをプランター代わりに使っていたらその下を見てください。杭木がグラグラしていたら抜いてみてください。もし昔切った木の切り株が残っていたらちょっとくじってみて下さい。使用していない植木鉢の下を見て下さい。木製の犬小屋があったら少しずらして下を見てください。あるいはエアコンの室外機や水道のモターを木製の小屋根で覆っていたらその柱の下部を見てください。案外簡単に白アリが見つかるかもしれません。)

でも白アリにとってそれらの場所ではいつ天敵の蟻やハサミムシ、蜘蛛その他の昆虫に襲われるかもしれません。
また雨や雪、太陽の直射日光といった天候の変化も脅威です。
コンクリートの下ならどうでしょう。そこは天敵に襲われる心配もなく水の確保もコンクリートが水分を集めてくれるので必要なし。おまけに頑丈なコンクリートが雨、風、雪、直射日光から守ってくれます。型枠の残り木でも埋まっていればもう最高!
「昔は住む場所を探すのに、えらい苦労したもんだが今は人間のほうで俺たちの住む場所
を提供してくれる、いい時代になったもんだ。」なんて白アリは思っているかもしれません。



E 基礎の化粧モルタルにご用心!

{化粧モルタルは百害あって一利なし!}


<事例4>
これも最近じわじわと増えている事例です。やはりコンクリートが原因です。
昨年お風呂場から羽アリが出て駆除した家から、今年また羽アリが大発生したという連絡!しかも発生場所が今度は二階の部屋だといいます。
総二階の家なのでお風呂場の真上の部屋からの発生に違いない、たぶんお風呂場の柱の中にまだ生き残りがいてそれが柱をつたわって二階まで登ったのかも!しまった!駆除の失敗だ!
そう推理しながら駆けつけると、なんとお風呂場とは正反対の二階の部屋から羽アリが発生していました。

イエ白アリとちがってヤマト白アリの場合、柱の中や壁の中に巣をつくりそこを拠点として活動することは、まずありません。必ず土中に巣をつくりそれから木部に侵入してきます。
そして地下から地上を通過して木部に到達する間は「蟻道」というトンネルをつくります。その中を毎日往復しています。つまり「蟻道」は彼らにとって通勤道なのです。ですから二階から羽アリが発生しても原因は必ず地下にあるのです。したがってまずその通勤道である「蟻道」を発見することが駆除の絶対条件になります。
ところが羽アリのでた二階の部屋の真下の部屋の床下をいくらていねいに探しても蟻道が見つからないのです。もしかしたら、また外部のポーチかベランダからの侵入?と思いそこを探してもやっぱり「蟻道」は見あたりません。
まいったなぁ一体どこだろう?と
ふと基礎を見ると、かすかに化粧モルタルの一部に小さなひびがありそこに砂がほんの少し詰まっています。
これだ!化粧モルタルを剥がしたらやっぱりそこに「蟻道」が隠れていました。
つまり基礎と化粧モルタルのほんの僅かな亀裂から侵入し柱をつたわり二階まであがったのでした。
白アリ恐るべし!そのときの気分です。




F 床下に放置された残材は白アリを呼びこむ原因になるか?

{必ずしもそうではない!}

これは私も長い間、残材こそが白アリを呼びこむ最大の原因だと思っていました。
しかしどうも違うようなのです。
「残材があるから白アリが集まってくるのではなくて白アリがきたところにたまたま残材が置いてあった。」というのが正解だと思います。
もちろん残材はあるよりないにこしたことはないでしょう。でも逆の見方をすれば残材が床下にあったからこそ白アリが土台に到達する「時間稼ぎ」になっているともいえるのです。沖縄地方では家の周囲を掘って丸太を埋め込み外部からの白アリ侵入を防ぐ習慣が昔あったと聞いていますが、それと似た効果があるかもしれません。

まあ毎年、床下に潜って白アリ点検をするのならともかく、残材の放置はやはり、  あんまりお勧めできません。
ただ残材が白アリを呼びこむことはないと思います。というのは白アリはきわめて原始的な昆虫でそんなに利巧ではないからです。彼らはただ淡々と目前にあるモノをかじりながら進むだけでそこに恣意的な意図はまったく感じられないのです。




G 畳の下に御用心!

{畳下の床板にコンパネは避けるべし!}

昔は畳をめくると床材は杉板でした。そして板と板の間に5o位の隙間がありました。
釘も打っていない場合もあったようです。これは定期的な「畳干しの習慣」があったからですが、そのときついでに床下を覗くことも簡単にできました。

いまはほとんどがコンパネ(ベニヤ板12o厚)です。板と板の間の隙間もなく電動釘打機で釘の頭が見えなくなるくらい深くうちこんであります。ですから床下を覗こうと思ってもなかなか面倒です。だから昔の方が良かったというつもりはありません。昔の家は隙間風が入って喚気が良かった面はありますが、そのかわり、とにかく冬は寒かった。

ただ高気密高断熱も度が過ぎるといろんな弊害をもたらします。壁紙、カーテン、家具類から出る防腐剤、難燃剤等の化学物質が原因のシックハウスについては皆さんもご存知だとおもいます。
築後10年も経って畳をめくると例外なくほとんどのコンパネが茶色と白のカビに覆われてしまいます。またコンパネが水分を吸って波打っている事も珍しくありません。そういう家には俗に言うキラ虫(紙魚虫)をよくみかけます。キラ虫(紙魚虫)は障子紙や絨毯、箪笥の着物に穴をあけることもあります。すべて永年溜め込んだ湿気が原因です。
それで後年コンパネをはがして杉板にリフオームすることになる家も多いので、新築のときはじめから床板は杉板にすればこのようなことは減ると思います。

 (ついでに畳の選定についてですが、もし壁紙が通気性の悪いクロス壁の場合は、
せっかく高価な畳を選んでも水分を吸ってすぐダメになりますから注意してください。壁紙の種類によって畳は選ぶべきだそうです。これは良心的な畳屋さんのアドバイス。)




H 水周りの外基礎には必ず通気口を設けるべし!

{後の出費が大幅に減ります!}

築後10〜15経つと水周りのリフオームをする家が増えてきます。
浴室、トイレ、キッチン、は毎日使うところですからどうしても傷んできます。
でも20年経ってもほとんど傷まないで暮らしているお宅もあります。
その差はなんでしょう? やはり通気です。浴室、トイレ、キッチンの窓をいつも少し開けて風を通している家は長持ちします。(ただし共稼ぎのお宅はそうしたくてもできないかもしれません。その場合はせめて天気の良い休日には窓をおもいっきり開放してください。)
 それから浴室の脱衣場とトイレの外基礎に通気口がない家は意外と多いものです。
もしそこに通気口が設けてなかったら必ず設けてください。設計段階で設けるように交渉することをおすすめします。もし間に合わなかったら、あとから増設しても費用はたいしてかかりません。それによって5年後、10年後の水周りの土台の傷みが格段にちがってきます。水周りのリフオームはとてもお金がかかるものです。このちょっとした手間があとあとの出費を助けることになりますよ。


 
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